ピル(OC、LEP)
「ピルは避妊のためのクスリ」と思われていますが、実はピルの効果はそれだけではありません。ピルを上手に使うことで、女性が得られるメリットは沢山あります。ピルには卵胞ホルモン、黄体ホルモンという2つの女性ホルモンが含まれています。ピルはOC(経口避妊薬)とLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)の呼び方がありますが、エストロゲンの量やプロゲスチンの種類が違うだけでピルとしての効果や働きはほぼ同じです。OCは避妊薬として、LEPは月経に伴うトラブルに対して使用されます。毎日1錠ずつ、同じ時間帯に飲むことが大事です。ピルの種類によって、飲み方がやや異なりますので初めての処方の際はもちろんのこと、ご希望があれば飲み方の説明も行っています。
1.避妊効果
ピルには避妊効果があります。ピルは排卵を抑制し、子宮内膜を受精卵が着床しにくい状態に変化させます。また精子が子宮内に侵入しにくい状態にします。これらの効果により適切な使用法であれば、99.2%妊娠を防ぎます。ほぼ確実な避妊方法と言えます。避妊用のピルは自費になります。
自費のピルのお値段
ラベルフィーユ(トリキュラーの後発品) 1シート 2800円(税込み)
ファボワール(マーベロンの後発品) 1シート 2800円(税込み)
2.月経トラブル
ピルは排卵を抑制し、内膜を薄くすることで痛み物質(プロスタグランジン)の産生や月経量を減らし、生理痛や月経量を軽減することができます。またピルを内服することでホルモンの変化が起こりにくくなるため、PMSや月経不順にも効果があります。また月経を移動させることも可能です。
3.ニキビの改善
ピルの種類によっては男性ホルモンを低下させる効果があり、ニキビや肌荒れにも効果があります。
ピルと血栓症について
「ピル」といえば「副作用が心配」というお声を良く聞きます。ピルによる血栓症などの副作用が問題として大々的に取り上げられたのは、開発初期のピルに含まれるホルモン量が多かった頃の話です。最近のピルは、ホルモン量がその当時の数分の一から数十分の一に減少し、副作用も起こりにくくなっています。そして頻度は少ないとはいえど、ピルを内服する場合は血栓症に対する理解や対応を知っておくことはとても大切です。
血管に血の塊(血栓)ができて、血管が詰まり肺塞栓や脳梗塞など重篤な合併症を引き起こすことがあります。ピルといえば、最も警戒すべき重大な副作用は血栓症です。ただしその頻度はかなり低いです。ピルを服用していない人で、静脈血栓塞栓症を発症する女性は、年間で1万人中1~5人です。一方、低用量ピルを服用すると年間で1万人中3~9人になります。一見リスクが上がっている様に見えますが、実は妊娠している方は年間1万人中5~20人、出産後12週間までの女性は1万人中40~65人が発症するというデータがあります。つまり、妊娠中~出産後の女性に比べても、低用量ピルを飲んでいる女性の血栓症リスクは低いため、過度に心配する必要はありません。重要なことはもともと血栓のリスクがある方にはピルを処方せず、他の治療を提示する、血栓症の症状について理解して頂き早期発見を心がけることです。また当院では避妊や月経トラブルに対して比較的長期間内服するピルに関しては全て低用量ピルか超低用量ピルを採用し、重篤な副作用を見逃さないために定期的な血液検査を行っています。
★血栓症を疑う症状★
激しい腹痛
呼吸困難を伴う様な胸の痛み
経験した事のないような激しい頭痛
視界がおかしくなる、ろれつが回らなくなる
強い足の痛みや異常な足の腫れ、色の変化
ピル内服中にこれらの症状を認めた場合は、必ず病院を受診しましょう。
【ピルが内服できない方】
35歳以上で1日15本以上の喫煙者
前兆(目の前がキラキラするなど)を伴う片頭痛のある方
中等度以上の高血圧のある方
50歳以上の方(40歳以上は慎重投与)
静脈血栓症、肺塞栓症、冠動脈疾患及び既往歴のある方
コントロールのつかない糖尿病の方
乳がんの方
重篤な肝障害、肝臓がん、肝腫瘍(良性、悪性)の方
手術前4週間 手術後2週間
出産直後の方
授乳中の方(分娩後6か月以内)
よくあるご質問
ピルは内服開始直後に軽い吐き気、頭痛、むくみ、不正出血などが起こることがあります。飲み始め1ヶ月以内に起こり、2~3ヶ月内服を続けると症状がなくなることがほとんどです。また現在ピルの種類は沢山あり、ピルの種類を変えたり、ピルに変わるホルモン療法を使用したりします。マイナートラブルで嫌になっても、他のピルを試すことで問題なく内服できることも良くあります。ピルは正しく使えばとてもメリットのある薬です。お気軽にご相談下さい。
避妊目的の場合避妊効果を維持するには、毎日決まった時間にのむ必要があります。1~2時間程度のずれは問題ありません。
★飲み忘れが1日未満の場合(1日分を飲み忘れて、次の日の服用時間前に気がついた場合)
飲み忘れに気がついた時点で直ぐに忘れた分を飲んで下さい。次のピルはいつもの時間に飲んで下さい。避妊効果は維持できると考えられています。
★1日分を飲み忘れて、次の日の服用時間に気がついた時
前日分と当日分の2錠を内服し(1日2錠までは内服しても大丈夫です)、翌日以降は通常通り内服して下さい。避妊効果は維持できると考えられていますが、避妊を望む場合は他の避妊法も併用して下さい。
★2錠以上飲み忘れている場合
気がついた時点で直近の1錠を内服して下さい。当日分は通常通り内服して下さい(1日2錠までは内服しても大丈夫です)。避妊効果が維持できていない可能性が高いため、その他の避妊方法を併用して下さい。飲み忘れに気がついた時点で72時間以内に性交渉があった場合は緊急避妊薬が必要な事があります。当日直ぐにご予約頂くか、電話にてお問い合わせ下さい。飲み忘れ後7日以上経過したあとは避妊効果は維持されると考えられています。
★3錠以上飲み忘れている場合
おそらく数日以内に月経がきますので、いったんピルの内服を中止しましょう。飲み忘れに気がついた時点で72時間以内に性交渉があった場合は緊急避妊が必要な可能性があります。当日直ぐにご予約頂くか、電話にてお問い合わせ下さい。
いずれの場合も、飲み忘れた周期で月経が予定通りこない時は必ず妊娠していないか確認しましょう。
毎回は必要なく、問診や採血だけで終わる事が多いです。ただし、初めてお薬をお出しする時は子宮や卵巣に何か異常がないか調べる必要がありますので、投与前に少なくとも一回は婦人科診察をお勧めしています。その後も症状ある場合や必要があれば説明の上、適宜行います。月経移動のピルや、緊急避妊のピルの場合は内診は必要ありません。
ピルは初経が開始した女性に対しては何歳からでも使用して良い事になっています。実際多くの中学生、高校生の女性がピルを内服しています。但し、まだ身長が伸びている人はピルに含まれる卵胞ホルモンの影響で身長の伸びがストップしてしまう事があります。当院では思春期外来を設けていますので、月経不順や月経痛、PMSなど月経にまつわるトラブルに関してもお気軽にご相談下さい。
はい。来院されてかまいません。不安なことは何でもご相談下さい。また当院でもかかりつけ患者さまに限定していますが、オンライン診療は行っていますので対面診察が可能な婦人科クリニックでオンラインピル処方を受けたいと思われる方もご相談下さい。
ピルをのむことにより、不妊になるということはありません。ピルはのんでいる期間のみ排卵を抑え、避妊効果を発揮します。ピルの内服で排卵が抑制されたり、内膜が薄くなる事は例えるならば、スマートフォンの「機内モード」と同じです。飛行中(ピルを内服している間)は機内モードにすると機能が制限されますが、飛行機から降りて機内モードをオフにする(ピルの内服をやめる)と全ての機能がたちまち元通りになります。それと同じようにピルが妊娠や出産、将来の赤ちゃんに影響を与えることはなく、むしろ子宮内膜症がある方は病状の進行を食い止め、将来の不妊のリスクを軽減することが期待されています。
ピルをのむことで、卵巣がん・子宮体がんのリスクは減少するといわれています。子宮頸がんの発症率は上昇するといわれていますが、これはピルをのんでいる方は性交渉を行う頻度が高い傾向にあり、子宮頚がんの原因であるヒトパピローマウィルスに感染しやすく、結果的に子宮頸がんのリスクが高まると推測されています。ピル内服中も2年に一度は子宮がん検診を受けましょう。乳がんに関しては現在日本で保険適応されている低用量ピルは、明らかに乳がんのリスクを上昇させるという根拠は存在しません。
のみ始めに少量の不正出血が見られることがありますが、数日~1ヶ月以内に治まることがほとんどです。また、のみ忘れにより出血することがあります。出血が多い場合や様子をみても止まらない場合は受診して下さい。
ピルを継続していると月経が止まる場合があります。ピルの効果で出血が全くなくなると不安に感じる方がいますが、基本的に問題はありません。ただし、飲み忘れがあった方や、明らかにつわりに似た症状があるなど月経が来ないことが妊娠の可能性があれば確認が必要ですので受診して下さい。
ピルの内服と体重増加に因果関係がないこと(ピルを内服しても太らないこと)は研究で証明されています。だだし、飲み始めの3か月程度は黄体ホルモンの作用により一時的に食欲が増えたり、むくみやすくなることはあります。それらのマイナートラブルも内服を続けるうちになくなることがほとんどです。そのため長期的にはピルの服用で太ることはないとされています。
問題ありません。しかし、酔って吐いてしまった場合などは効果が弱くなる可能性があります。過度な飲酒は控えましょう。
薬局で市販されているようなかぜ薬、漢方薬、痛み止め、花粉症の薬、目薬、湿布薬、塗り薬などは一緒に服用・外用しても特に問題ありません。ただし病院で処方される様な一部の薬や健康補助食品はピルの作用に影響を及ぼすことがあるので、医師もしくは薬剤師にご相談下さい。
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Tel. 092-852-7301