月経トラブルがある方へ
月経のトラブルは多くの女性が経験しています。「いつものことだし…」「年齢が年齢だし..」「婦人科に行くのが恥ずかしいし..」などの理由で様子をみていませんか?
月経トラブルの中には重大な病気が隠れていたり、放置すると将来がんや不妊症になってしまう病気もあります。
このページではよく見られる症状やお悩みについて解説します。気になる方はお気軽に当クリニックへお越しください。
1.月経痛が強い
月経に伴う症状(下腹部痛、頭痛、吐き気、身体のだるさ、眠気など)によって日常生活に支障がある場合を「月経困難症」といいます。日本には治療が必要な月経困難症患者は約900万人いると言われていますが、なんとその中の90%以上の方が本来必要な治療を受けていません。これは日本人女性が我慢強い事、婦人科受診への抵抗感、月経痛は市販の痛み止めで我慢するのが普通といった誤った思い込みによるものと考えられます。
月経困難症には原因となる疾患がない「機能性月経困難症」と原因となる疾患がある「器質性月経困難症」があります。
機能性月経困難症は初経から25歳前後の比較的若い女性に多く、子宮が未発達であったり、痛みを起こす物質(プロスタグランジン)の産生が多いことが原因と言われています。ホルモン治療や漢方療法を数年行い、その後年齢を重ねたり、出産後に軽くなる方も多いです。
器質性月経困難症の代表的な疾患は子宮内膜症や子宮筋腫です。器質性月経困難症は無治療で放置すると将来不妊症やがんになるリスクが上がったり、重症の貧血に進展することがあるため、ホルモン治療を中心とした治療が必要です。婦人科医が診察しないと診断ができないこと、放置すると段々と酷くなることから、月経痛が重い方は受診を強くおすすめします。特に子宮内膜症は女性の一生に影響を与えかねない重要な病気です。
月経困難症は沢山の治療方法があり、機能性か器質性か、子宮内膜症の有無、年齢、合併症、今後の妊娠出産希望、出産の経験など患者さま一人一人の背景に合わせてホルモン治療(ピル、ジエノゲスト、ミレーナ、レルミナなど)、漢方療法、ロキソニンなどの痛み止め、またはそれらの組み合わせを治療方法として提示しています。
また性交経験がない女性や内診への強い不安がある女性に対してはなるべく内診は行わず、お腹からの超音波や血液検査を用いて診察を行います。
2.月経量が多い
一般的に月経血量は20~140g、平均50~60gとされていますが、普段出血を量ったり、他人と比較したりすることがないため自覚されていない方も多いです。大きなレバー状の塊が出る、ナプキンが横漏れするなどの方は月経量が多いと言って良いでしょう。
健康診断で貧血を指摘された場合も内科だけではなく、ぜひ婦人科も受診されてください。
月経量が異常に多い状態を過多月経と言います。自分の月経量が多いか分からない場合は問診や血液検査で確認できますので、お気軽にご相談ください。治療が必要な原因としては子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮体がんなどがあります。
治療はホルモン剤、漢方薬、手術療法などから患者様にあわせてご提案いたします。
3.月経周期がバラバラ
月経周期(月経から次の月経までの日数)は25~38日が正常範囲です。毎回一定でなくても、前後6日程度のずれであればあまり問題ありません。周期の異常には3ヶ月以上月経が止まってしまう続発性無月経、月経が止まらず出血している日数が長い過長月経、毎回月に2回月経がくるなど回数が多い頻発月経などがあります。
一回きりの月経不順であればストレスによるホルモンバランスの乱れである事が多いですが、頻繁に起こる場合は将来不妊のリスクにつながったり、妊娠しても流産を繰り返す原因となる疾患が隠れていたり、将来的に骨折しやすくなる危険性があります。
また無理なダイエットや激しい運動などによっても月経周期が乱れることがあります。
診断は超音波検査と血液検査で行います。希発月経や貧血をきたす程の止まらない出血、過多月経や頻発月経がみられる方は治療の対象になります。治療はピルによる月経コントロール、漢方療法などを行います。
また、当院では赤ちゃんがすぐに欲しい方や将来的に欲しい方に向けて、治療方法や妊活に関する指導、説明(プレコンセプションケア)を行っています。
4.月経前に調子が悪くなる(PMS、PMDD)
PMSとは月経前症候群の事をいい、月経が始まる3~10日程前に様々な精神症状(不安・イライラ・気分の落ち込み・不眠・無気力・判断力の低下 など)や身体症状(めまい・頭痛・疲れやすい・下腹部痛・胸の張り など)を認めます。原因ははっきり解明されていませんが、月経前の黄体期に女性ホルモン、黄体ホルモンが低下する事が原因ではないかと推察されています。
実は女性の70〜80%の方が月経前の体調不良、軽いPMSを経験していると報告されています。その中で学校やお仕事、家事育児に支障が出るようであれば、治療が必要と言えます。
治療は身体症状が強い場合はピルや漢方薬、精神症状が強い場合は抗不安薬や抗うつ薬などを使用します。
またPMDDというPMSの精神症状が強いタイプは「消えて無くなりたい」「感情が全くなくなった」「自分なんていなくなれば良いのに」などの強い抑うつ状態や自傷念慮などかある事が多く、婦人科医だけではなく心療内科の専門医に協力を依頼する事があります。お一人で悩まずお気軽にご相談ください。
5.月経がこない
今まできていた月経が3ヶ月以上こなくなる状態を続発性無月経といいます。
妊娠の可能性がなければ、無月経の原因のほとんどは排卵が起こっていない事によります。「月経周期がバラバラ」の項に示したように排卵が起こっていない原因はさまざまで、将来の妊娠や出産に影響があるものもあります。
検査や治療は月経不順の場合と同様です。いつもより1~2ヶ月遅れた場合でも、早めの受診をおすすめしています。
6.月経と違った出血がある、いつもの月経と違う
月経以外の出血を不正性器出血と言います。子宮ポリープや子宮筋腫、内膜症、子宮がんなどの様々な病気を念頭に診察が必要になります。特に閉経後や更年期の出血は子宮体がんのリスクがあるため、必ず婦人科医の診察を受けましょう。
また、普段の月経と違う出血がある場合は妊娠の可能性や排卵障害などが原因の可能性があるため、繰り返す場合や出血が止まらない場合も一度受診されることをおすすめします。
よくあるご質問
月経中の受診でも問題ありません。むしろ過多月経や過長月経は止血が必要な場合もありますので、月経中であっても受診したいタイミングでご予約をお取りください。
受診をおすすめします。一般的に思春期年齢の若い女性は、初潮後でもホルモン機能が未熟で排卵が上手くできないことが多く、月経不順は一般的な症状で、治療の必要がないことも多いです。
しかし治療の必要性がないかどうかは婦人科医が診察しないと判断できません。少量の出血がずっと続いてナプキンが長期間外せなかったり、PMSや月経痛の症状で学業や部活動に支障があって本人が困っていたり、悩んでいる場合は原因を調べながら治療を検討します。
当院では思春期外来を設けており、思春期というナイーブな時期に配慮した患者さまの悩みやそのご家族の不安にも対応いたします。性行為の経験がない方には内診はなるべく行わず、まずはお腹からのエコーや血液検査で対応しますのでご安心ください。またピルなどのホルモン剤が必要なことがありますが、どうしても抵抗がある方には漢方治療も行っています。
一度受診されることをおすすめします。月経不順や不正性器出血、過多月経などは年齢によるホルモンバランスの異常で引き起こされる事も多くありますが、中には子宮筋腫や子宮内膜症を認めたり子宮がんが隠れている場合があるからです。
特に婦人科は受診するのに抵抗がある方が多いので、出産後は受診されていない方が本当に多いです。婦人科を長期間受診していない方や一度も受診した事がない方は、年齢が原因と自己判断せずに婦人科を必ず受診されるようにしてください。